自己愛と臆病、小心、心配性

尊大,傲慢な態度の背後に小心,臆病,心配性が見え隠れするのは自己愛型の特徴である。
臆病ではないから傲慢なのではなく、臆病であるからそれを補うために傲慢なのである。
生育歴でいえば、親が子どもを賞賛する場合には特に理由も裏付けもない。単に盲目的にかわいくて、しばしば誰も読めないような非実用的な名前を付けたりする。こどもは傲慢になるが、何が裏付けなのか分からない。成長の過程で、自分は傲慢になる理由はないのだと悟るか、何かの理由で自分は傲慢でもいいのたと思うのだろう。しかしそのような体験もなく、子どもの時のままの心性を持ち越して、傲慢であるがその理由は分からず、従って、本質的には小心、臆病、心配性であるような人がいる。
自分の得意な領域にのみとどまりたいと思うのも、自己愛型の特徴で、臆病に耐えられないからである。
空想性が特徴の場合もある。小心と傲慢の間を空想で満たそうとする。
自己愛的な怒りの背景には臆病がある。

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尊大,傲慢な態度の背後に小心,臆病,心配性が見
え隠れする自己愛型の人格障害の一タイプである。昔
からよくある自己愛性人格障害である。

人事管理や得意先との交渉などが主要な仕
事になると,途端に無気力になる途中下車症候群でみ
られるような人格構造,つまり得意な領域だけに留ま
ろうとする人格となっているのだ。
しぱらくすると,これらが小学高学年から中学校にかけて,仲間
ないしは社会にじっくり溶け込んでいなかったことを
示すエピソードが隠れていることが多い。

ヤングアダルトの発達課題である社会心理的困難を乗り
越えることに失敗し,退行を起こし,社会的要請に応
えることができずにますます退行を起こすという悪循
環をきたして閉鎖回路を形成し,パターン化している
に過ぎないのである。そこには従来の精神病質概念に
はない治療可塑性があるといえる。

プライドが高く,些細な行き違いから激しい怒りを生じやすい。背後に小
心,臆病,心配性がある。これを支えていると,不安,
苦情が多いとはいえ,何とか適応している。
この症例に特徴的なのは,人間関係で馬鹿にされた
と感じて被害的になりやすいと同時に激しい怒りを
もって周囲に向かうことである。仮に戦闘モード型症
例(ある患者の言葉の引用である)としておく。

非常な傷つきやすさと誇大な自己像が明らかとなり,そ
の背後の小心,臆病も明らかとなった。そのころから,
仲間との食事会を中心にした会合やアルバイトなどと
社会的接触が始まるが,馬鹿にされる不安や自己愛的
傷つきによる激しい怒りはしばらく続いている。そし

両親のわがままな生き方に弄ばれて成長する中で,両親の価値観に支配さ
れた特有の世界を形成し,現実世界との接触を阻まれ
ている人格傾向があることである。英国の対象関係論
が述べる自己愛的構造体とか,病的構造体と呼んでい
る現象である。幼児期に両親に支えられて万能体験を
持つ機会を持つことができなかっただけではなしに,
両親の持つ特有の考え方に引っ張られて現実世界とは
隔離した特有の世界観を形成しているのである。これ
ほど重症な症例はそれほど多いとは思わないが,見る
からに従順でお人よしの感じを与えながら,追い詰め
られると激しい感情ないしは行動を見せるケースは決
して少なくない。

空想性,ウソ性は自己愛性障害の重要な指標である。
周囲が本人の言動を信用してしまうが故に,結果的に
だまされることになり,信用を失い,生活の破綻へと
至るのである。本人を破綻から救うにはこの空想性を
見破る以外にない。

自分の得意な領域では自信を持つが,自
信のない領域では腰が引けてしまう程度の自己愛的な
人格から,特有の非現実的な世界を形成して現実に触
れるとなると,身震いするような緊張状態から戦闘
モードといってよいほどに警戒的,攻撃的になって遂
には一線を交えてしまう例までさまざまである。中に
は,現実との接触を完全に避けて空想癖の中に逃げ込
んでしまう例もある。

背後に独りよがりな両親像があっ
て,それに対する激しい怒りと同時に,それに相反す
る憧れという感情があるのが一般的である。その両者
を認めることができるようになると,かなりの一般的
社会生活をたどるようになる。しかし,この種の患者
に人格的変化を求めるには相当な時間と労力,さらに
は心理的技術を必要とするが,この種の患者の心理に
精通していると,扱いが違ってくるし,その結果は意
外と大きいものであることを心しておきたいものであ
る。

自己愛的な問題を持った人は非常にしばしば暴力的言動(自己愛的怒り)
を持ちやすいが,その背後に小心,臆病,心配性といっ
た心性のあることを承知して

「怒り」の衝動をもちやすい自己愛性障害
の人である。これには,引きこもり型(回避型)から
トラブルメーカー的な攻撃型,さらには反社会的行動
障害型までさまざまだが,基底には小心,心配性の心
性のあることを指摘した。

人格障害という概念が従来の精神病質とは異なり,大人の人格に成
長できていない状態の人たちのことだという認識である。