田舎の方が消耗する

“東京で消耗している人が田舎で癒されるかというと決してそんなことは無くて、田舎の方が消耗することは多いと思う。何故かというと、たいてい人間が消耗する理由というのはほぼ90%が人間関係で、その濃密な人間関係というものは東京よりも田舎の方が激しいと思われるからです。田舎から出てきてまた地元の田舎に帰るというのでなければ、たいてい、田舎の、濃密で、誰がどこで何をしたかというのがその日のうちに広まり、外から来た人間は三代住み着いてもまだよそ物扱いみたいな土地はたぶん東京よりもはるかに消耗する。東京での消耗だって、結局、上司とのそりが合わなかったり、理不尽なことをいう顧客だったり、果てのないクレームと追加仕事による労働地獄だったりするわけですけれども、田舎に引っ越すとそれが家族的親密さをもって、数倍の勢いで攻め込んでくると田舎に引っ越したエピソードによく書いてある。そして、そんな疲れた心を癒す消費グッズが何もないのだ田舎には。空気はおいしいけれども、おいしい空気で癒されるような、世界に対して注意力を持っている人間は、都会の朝焼けでも癒されただろうし、窓の外に広がる街頭のきらめきや、マンションの外側の階段でともる蛍のような煙草の火でも癒されるだろうし、人間そうみな詩人として生きているわけではない。”