森林破壊で、人口が激減した


人類最古の文明であるメソポタミアでは、当初の約1000年間は、建造物に日干し煉瓦が使用されていたが、5000年前頃からは、より堅固な素焼き煉瓦が使用され始め、3000年前頃にはピークに達し、多くのモニュメントや大型建築に驚くほど莫大な量が使用された。

 その結果、レンガ製造の燃料として、周囲の森林は大規模伐採されて枯渇し、雨期に大洪水が多発するようになる。この辺の事情は、人類最古の記録された叙事詩と言われるギルガメシュ叙事詩に記され、森林伐採による度々の大洪水の記述は、後のユダヤ教の聖書にある「ノアの箱舟」伝説のもとになったのではないかとも指摘されている。

 メソポタミア文明の中心であった都市国家、ウルとウルクは、最盛期に20~30万の人口を抱えていたとされるが、森林伐採による土壌流失と、その間接的影響による灌漑地の塩害によって農業の人口支持力は激減し、やがて文明は崩壊した。

 約4000年前に栄えたモヘンジョダロの遺跡で有名なインダス文明では、都市自体が素焼きレンガで建設されていたために、その膨大な量のレンガ製造のための薪炭用に、周辺の森林が徹底的に破壊し尽くされた。結果、雨による土壌流失と交易港が土砂で埋まった事に伴って、滅亡したとの説が有力である。過度な薪炭採集による森林破壊で、人口が激減したのだ。