象潟や雨に西施がねぶの花

松尾芭蕉が奥の細道最北の地として象潟を訪れたのは1689年8月1日、今から300年以上も前のことという。芭蕉は雨にうたれるネムの花に、中国の悲劇の美女西施を思い浮かべ、

「象潟や雨に西施がねぶの花」(きさかたや あめにせいしが ねぶのはな)と詠んでいる 。

松島は美人が笑っている様な感じだが、象潟は恨んでいるような感じである。寂しい感じに悲しみが添うて、この土地の様子は美人が心を悩ましている感じである。雨の象潟の景を、美女「西施」の憂える様になぞらえ、さらに「ねぶ」は「合歓の花」と「眠る」の掛詞になって、西施が目をつむる……物思いに沈んでいる姿を連想させる仕組みになっている。

合歓の花 というこの漢字がまたおもしろい。夕方になると眠る花という意味なのに、なぜこの漢字か。眠る→ねぶた(青森のお祭り)の関連はあるようなので、「ねむ」と「ねぶ」と「合歓」は一体なのだな。多分、「無」がむとぶの元の漢字にあたるのだろう。